本格的に蕎麦の食べ歩きを始めた頃に訪ねて以来、約10年振りに伺った「仲佐」。
東京・白山の普茶料理「梵」と飛騨高山の精進料理「角正」で各11年修業された後、1996年に結婚を機に下呂で開業した。
今回食したのは、以前は限定十食だった粗挽きの粉で仕上げた蕎麦掻 1200円と、蕎麦三昧 2000円。相方は夏季限定の冷やしかけそば 1050円を注文。
最初に出された蕎麦掻は挽きぐるみされた蕎麦粉が、星がはっきりと分かる位に粗く挽かれていて、ねっとりしつつもザラっとした口当たりで、今までに味わった事のない食感だが美味しい。先ずは何も付けず、二口目は山葵を少々乗せて、そして最後は生醤油を付けて、一品で三度も楽しめる。
その後、蕎麦三昧へと続き、なます皿で供されたのは、蕎麦の実飯蒸しと昆布煮。今回、餅米の上にはこの季節ならではのむらさき箒茸が乗せらていた。子供の頃、餅米や変わったきのこ等は余り好物ではなかったが、歳を重ねたせいか、季節を味わう事が楽しいと思える様になってきて美味しくいただいた。
そして、10年振りに味わった手挽きの蕎麦は、かなり粗く挽いたそば粉を透明感のある麺に打ち上げられていた。腰が強く、それでいて喉越しもいい、極上の味わいだ。そば湯は意外にも流行りのポタージュ系ではなかった。いつも思うことなのだが、美味しい蕎麦は姿も美しい。それが写真でどれだけ伝えられているか・・・。
今回、この追記をするにあたり、数年前に柴田書店が発刊した「そば うどん」の第34号で、仲佐の蕎麦会席が取り上げられていた事を思い出し確認してみたが、その解説の中でつなぎが3割だと知った。ずっと二八だと思っていただけにびっくりした。
この店の蕎麦は全て手挽き。それを変えること無く、ずっと続けていくことは、並み大抵の努力ではないと思う。
店主に頭が下がる思いだ。
* 仲佐のホームページはこちら *



蕎麦は全て手挽き


蕎麦掻 \1200
蕎麦三昧 \2000
・蕎麦の実飯蒸しと昆布煮
(餅米 蕎麦の実 むらさき箒茸)
・手挽きざるそば
・冷やしかけそば半盛り(夏季限定)
相方は大根と鰹節が乗った冷やしかけそば \1050

提供される寸前に削られた鰹節と辛味大根が乗ってくる夏季限定の冷やしかけ蕎麦は、見た目より濃厚なツユと絶妙にコラボレートしていた。

2008・09・01現在

蕎 麦 の 細 道

仲 佐
なかさ

一見どこの温泉街にでもある、ごく普通の蕎麦屋。
ところが、ここのご主人は蕎麦の世界では超有名人で、全ての製粉を手引きの石臼で行い、蕎麦切りに至るまでの一切を手仕事でこなしている。
 
蕎麦は、日本の名店と称される、「藪蕎麦宮本」や「玄」と似ていて、細切りの香り高いものだ。つけ汁は、この香り高い蕎麦に負けないように、香川産の溜り醤油を使って、半年寝かせたかえしにだしを合わせ、さらに1ヶ月寝かせたものを使っている。少し辛めで、甘めのだしが好みの人には合わないかもしれないが、本物にはこれくらい引き締まった辛さがぴったりだと思う。
 
蕎麦豆腐もあっさりしていて美味しかったので、うちで作ってみたが、似て非なるものだった。やはり、プロの味というのは、そう簡単に真似のできるものではないらしい。
 
自宅からは距離があってなかなか行けないが、下呂町・和佐地区の暦桜として有名な苗代桜が咲き誇る頃には、必ず訪ねてみたいものだ。

細打ちざるそば、900円。


お店
 
岐阜県下呂市森918-47
TEL:0576-25-2261
営業時間
11:30〜売り切れ仕舞い
定休日:水曜・祝日は営業
石臼挽き自家製粉
七三
丹生川村・下呂・奈川産
玄蕎麦使用
98・11・29現在
07・10営業時間変更追記
 
店の入口  

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