珈琲は勿論美味しいが、甘味として注文した蕨餅も、器もさる事ながら、添えられていた一輪のリンドウに心が癒された。

「鍵屋珈琲」のご主人は会社勤めの定年を意識し始めた頃、これからの人生をじっくり考えてこのお店を始める事にしたそうだ。自分達の好きな場所で、自分達のやれる事を、自分達の時の流れでやってみたい、そんな思いを形にしたのがこの「鍵屋珈琲」。
黒塗りの趣のあるしっとりした外観の平屋の建物は、一つ一つの素材を厳選し、最後はご夫婦の終の棲家として使える様に拘りを持った設えになっている。一枚板のカウンターの向こうには大きな開口の窓を設け、借景の田園風景が四季折々の佇まいを織り成す。
また、一段高くした奥座敷には隠しで囲炉裏が切ってあり、上から自在鍵が釣れる様にもなっている。胡座をかいてふと外に目をやるとそこには石組みをした庭が丁度イイ高さで観える。骨董好きのご主人のセンスの良さを感じさせる器や調度品に大人の隠れ家を見つけた様な嬉しさを感じずにはいられない。

チョンナで仕上げられた梁など和風建築ならではの素晴らしい技術があちこちに見られる。
因みに長さに拘った為になかなか見つからなかった一枚板のカウンターの半分は東京・銀座にある某有名寿司店のカウンターになっているそうだ。
尚、店内は禁煙、及び小学生以下の方の入店は不可となっています。