この九寸皿は、骨董を本格的に購入し始めて3年目の秋に購入した物です。見ての通り、三つに大きく割れた皿です。 当時は古伊万里の専門書を買って色々と勉強もし、訪ね歩いたお店の数も2百軒近くを数えるまでになっていました。 車で出掛けるのが苦ではなかったので、いろんな場所の骨董市や骨董祭にもよく出掛けていて、その折にこの皿を見つけて購入しました。 今ならフリーマーケットなどではこういう高価な物に絶対手を出さないのですが、この時は三重県四日市市の最終日曜日に行われるフリーマーケットで業者から購入しました。 チラッと立ち止まって色々と覗き見をしていたら、「どんな物をお探しですか〜。」と声を掛けられ、今の様にそば猪口に嵌まってなかったので「染付が好きなんです。」と話をしたところ、「傷物ですがこんな物を持っていますよ。」と見せてくれたのがこの皿で、完品ならとても手が出ない1730年〜1750年頃の九寸の深皿。私が「いいお皿ですね、でも傷で可哀相ですね。」なんて言ったもんだから、店主がおベンチャラを並べまくって何とかして買わせようと必死になってきたので、つい「傷でも高くて手が出ない。」と言ったら、「幾らでもいいよ、それだけ色んなお店も覗いているのならこの皿の価値も知っているでしょう。貴方の言い値で売るから値を付けてくれ。」と言われて、買う嵌めになった曰く付きの皿です。 帰りの車の振動で、家に着く頃には古い継ぎ目からニューが走って完全に漆が剥がれてしまい、修理に出す事になってしまいました。 以前、お気に入りの店で紹介した「古民芸・はた」さんで金継ぎをして貰いましたが、最終的にはお皿の購入価格の4倍ほどの修理代がかかってしまいました。思い掛けない出費となりましたが、綺麗に金継ぎを終えるとその模様は新しい味となり、大きなお皿なので箪笥の上に飾ってもかなり迫力があり見栄えもします。 こうやって出会った江戸時代から残ってきた美しい物たちの時代の預かり人として後世にも良い物が残せたら本望です。
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