米びつ


唐びつは本来、衣類や文書を収納しておく為の収納具である。
京都では「からと」と呼ばれ、米を収納する道具として台所で使われてきたらしい。
これは、静岡県磐田郡豊岡村の古布を中心に商っている骨董屋さんのお宅で見つけた。お店の扉を手前に引きながら、最初の一歩を踏み出した先に置かれていたこの唐びつ。
木の物が好きな私が目ざとくこれに気が付いて、ご主人にこれはなんですかと尋ねたら、すぐさま「米びつ」という返事が帰ってきた。
ふぅ〜んと鼻を鳴らしながら見入ってしまう。

私の実家では昔、一斗缶で米を保管していた。
米が減ってくると近所のお米屋さんが、大きな袋に米を入れて担いで来て、缶に入れて帰って行った記憶がある。
今と違って5kg入や10kg入の米をスーパーに買いに行く時代ではなかったので、どこの家庭でも米を入れる為の大きな入れ物が必要だった。一斗缶しか知らない私には、こんな立派な入れ物を米びつにするなんて、なんと贅沢なことだろうと思う。
 
これは上蓋が二分割されていて、蓋がズレないよう裏側に横木が打ってあり、箱の角は切り込みを入れ、しっかりと組んである。止め具には大き目の太鼓鋲が使われており、デザイン的にも美しく、且丈夫だ。
家に持ち帰った時は、底の辺に糠がこびり付いていて、米びつで使われていた事を如実に表していた。
 
当初、高さがもう少しあればパソコンの椅子として使う予定だったが、ちょっと寸足らずだったので、玄関脇で本入れとして使用中。

米びつの太鼓鋲

木のもの一覧のページに戻る HOME CONTENTS