2006.4/28(金)〜5/28(日)  休館日 毎月曜日
田原市博物館
愛知県田原市田原町巴江11番地1
п@0531-22-1720
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九代 玉屋庄兵衛によるからくり人形実演
4/30(日)・5/6(土)・5/7(日)・5/14(日)・5/21(日) 午前11:00〜・午後1時〜・2時〜・3時〜


弓曳童子と下で歯車を回す唐子

有名な茶運人形
歯車をセットする位置で
進む距離が違ってきます
からす天狗
人形が階段を登って行きます

尾張・名古屋が世界に誇る匠の技の伝道師、九代・玉屋庄兵衛の「玉屋庄兵衛の世界展」を田原市にある田原博物館に観に出掛けました。約1ヶ月の会期中に5日間だけ九代・玉屋庄兵衛氏による、からくり人形の実演があると案内に書かれていたので、どうせならこの機会にと予定を組んで行きました。
初回の実演が午前11時からだったので、その時間に間に合うように到着し、「茶運人形」と「弓曳童子」の実演場所の前に置かれた長椅子に陣取り、実演の開始を待つ事に。てっきり「茶運人形」と「弓曳童子」だけの実演だと思ったら、最初に少し離れた場所にある「からす天狗」の実演があることがわかったのですが、どうしても「弓曳童子」を近くで見たかったので、そのまま移動せずに「からす天狗」は遠くから眺めることに。
「からす天狗」の実演が終り、まずは「茶運人形」の実演から。その時、玉屋庄兵衛氏の口からサプライズな言葉が発せられ驚きました!「茶運人形」の正面に座っている相方に、人形がお茶を運んで来たら湯飲みを受け取り、飲んだ真似をして再度湯飲みを受け皿に載せて下さいと。えっえっとドキマギしている間に一直線に「茶運人形」は相方の目の前に来ました。余りに早く進んで来た為に写真を撮るタイミングを逸してしまいました。この人形はあまりにも有名なので、少しありがたみに欠けるような気もしましたが、それでも着物を脱がして中を見せてもらうと、その精巧さには驚かされました。竹を含め七種類の木をそれぞれの特性を見極めて使い分け、200年はもつ丈夫なモノを目指して制作しているそうです。(七代目の教え)
次の実演は座敷からくりの最高峰と言われる「弓曳童子」。この人形は矢を1本1本手に取って弓を曳き矢を放つという、とても繊細な動きをします。弓を曳いて矢を放つというだけでも驚くのですが、弓を曳く時の顔の動作はとても愛らしく、矢が当たればうれしそうに、はずれたら悲しそうな表情に見えると言います。それと言うのも、からくり人形の顔は能面の技術が取り入れられていて、見る角度で表情が変化するからです。この「弓曳童子」も11本の糸で動かしているそうですが、そのうちの5本が顔を動かす為の糸だそうで、大きな動作以外の顔の微妙な動作も丁寧に表現しています。そして、「弓曳童子」のかわいさにも増して魅力的なのが、童子の下で歯車を一生懸命回している唐子で、日本人の遊び心みたいなものを感じました。この「弓曳童子」は人形の座っている箱など全てが贅を尽くした素材で作られていて、そのまま床の間に飾っておいてもよいくらい美しい作品です。
これらの人形は1650年代にはほぼ今の形になっていたそうで、江戸時代の匠の技の凄さに驚かされました。こんな人形たちも、江戸時代には大名家や豪商たちのみが所有し一般人の目には触れる事も無かったそうです。こんな貴重なモノを真近で見て、尚且つ詳しい説明を聞く機会があって本当に満足な一日でした。
途中で食事に行く人は再入場ができるようにしてくれるということだったので、一旦館外へ出て食事を済ませ、見逃した「からす天狗」の実演も1時から見ることができました。
最後に一つ、今日聞いた薀蓄を。「からす天狗」の様な離れからくりなどの場合には、背中に四角い棒状のモノを差し込むのですが、四面には溝が切ってあり、その溝に金属の板をはめ込みスライドさせて人形に動作をさせます。この道具を「差し金」と言いい、人形ごとに用意するそうです。「誰の差し金だ!」と言う言葉の語源は、ここから来ているそうです。
 
* 写真撮影は実演中だけということでロビーの人形に限りOKでした。HPに掲載することは許可を得ています。

2006.5.6現在

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