席に着くと、お蕎麦について試験管に入った玄そばや粉についてご主人が丁寧に説明してくれます。 取りあえず、相方と2人で、丸ぬき・玄びき・変わりそば(ごま切り)を各1枚ずつ注文しました。 丸抜きは、高山製粉所が八ヶ岳産の玄そばを使い手挽きメッシュという手挽き風に製粉した粉8割に、同じ八ヶ岳産の玄そばをコーヒーミルで粗く挽いた粉を加えて十割で打たれています。ざらついた粗挽きの粉の食感に香りが絡む美味しい蕎麦をいただきました。量が少なくアッという間に食べてしまったので、相方と顔を見合わせていたら、奥さんから1人前を半盛りにして分けてお出ししていますと云われて納得しました。最初から取り合いにならない様に小分けにして出してくれるなんて、優しい心遣いで嬉しくなりました。 この粗挽きの蕎麦を打つに至った背景には、蕎麦屋を始める前に食した木曽の時香忘の美味しい蕎麦が原点にあるとのお話でした。この粗挽き蕎麦の打ち方は、コーヒーミルで挽いた大きなそばの実が混じるので45ミリの太いのし棒で角出しまでした後は、手のしで伸ばす方法を取っているとの事でした。 玄びきは、地元・高森町産の玄蕎麦を氷温保存したモノを挽きぐるみにして、ほぼ十割で打たれています。噛みしめると時々感じる星と甘みがいい感じでした。 最後はごま切りの変わりそば、更科粉の中に地元・駒ヶ根産の胡麻が練り込まれ、ひと口いただくと爽やかな胡麻の香りが鼻腔にフワァっと広がります。浸け汁は練りゴマが入ったモノが用意されます。 3種類のそばは美味で、それぞれ個性的な味わいでした。そば湯はオーソドックスな茹湯タイプ。 地元の方にかわいがって貰える様な店を目指しているそうですが、信州では自宅で蕎麦を打つ家庭が多く、なかなか高いお金を出してまで拘りの蕎麦を食べに行く習慣が余り無い様で、現在は大阪時代のお客さんがぼつぼつ来てくれている位だそうです。当然打つ蕎麦の量もあまり多くは無く、平日は丸ぬき・玄びき・変わりそばを各6食の合計18食。土日には玄びきを多少増やして調整していますとの事でした。 ネットでPRする気も無く、いつか地元の方々の口から「うまい!!」の言葉を聞ける様にと、蕎麦と真摯に向き合っている姿に、思わず応援をしたくなる蕎麦屋でした。同じ駒ケ根市には中央道を挟んで全国区の名店『蕎麦と野のもの料理 丸富』もありますが、ここ『そば切り てる坊 』もお勧めのお店です。
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